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By Andrew Baron, Vice President, Machine Learning & Marketplace
September 4, 2017

PubMaticは、ホワイトペーパー「オークションダイナミクスを理解する」を発表しました。オンライン広告のエコシステムにおいて、オークションダイナミクスの役割は益々大きくなっています。今回のホワイトペーパーでは、その詳細を解説しています。

 

ヘッダー入札の普及に伴い、プログラマティック広告のオークションは大きく進化してきました。しかし、インプレッションに支払われる価格を左右するオークションダイナミクスは複雑です。そこで、オークションの仕組みを理解してもらうため、入門編では以下のテーマについて詳述しています。

 

  • サプライサイドへのアクセスのルールはどのように変化しているか;
  • ヘッダー入札の競争激化によって、パブリッシャーのeCPMが上昇する理由;
  • さまざまな入札戦略とその仕組み;
  • プログラマティック広告オークションの将来にかかわるキートレンド;
  • オークションの種類と連携をめぐる複雑な議論
  • 最低価格と利用料はセラーとバイヤーにどのような影響を与えるか;

 

ホワイトペーパーは、こちらからダウンロードください。

プログラマティック広告のオークション取引では、透明性が重要な役割を果たします。そこで、セラーとバイヤーの視点から、テイクレートの透明性について考察してみたいと思います。少なくとも現在の市場では、どちらの視点からも、テイクレートに関する議論は的が外れているように感じられます。

 

セラーの視点

まず、セラーの視点から見ていきましょう。SSP1、SSP2という2つのSSPを評価しているとします。SSP1のテイクレートは20%、SSP2は業界の水準よりはるかに高い50%。この時点で、あなたはおそらくSSP1を選ぼうと思ったはずです。その選択は本当に正しいのでしょうか? SSP2のテイクレートはSSP1の2.5倍です。しかし、SSP2はSSP1より落札率が50%高く、落札価格も50%高いとしたらどうでしょう? 下記の例を見てください。

 

Auction Dynamics Blog - Take Rate Example

SSP2の方が効果的だと思ったのではないでしょうか? 事実、成果を重視する場合、SSP2の方がSSP1より40%以上も魅力的です。結局、成果という評価基準の方がテイクレートより重要であり、これが需要を創出するのです。つまり、バイヤーが支払う金額とセラーの懐に入る金額の差を心配するより、インプレッションに対するバイヤーの支払い意欲とセラーが獲得できる金額の差を気にした方がいいということです。たとえテイクレートが業界の水準よりはるかに高くても、最も重要な評価基準で競合相手より40%魅力的なSSPの方が、パブリッシャーにとっては重要なのです。

 

バイヤーの視点

 

SSP1のテイクレートがわずか20%である一方、SSP2を選択した場合売上の50%に支払う必要があります。バイヤーの視点から見ても、多くの人が尻込みするのではないでしょうか? しかし、真の課題を知りたければ、自らに問い掛けてみるべきです。なぜ自分はSSP1よりSSP2に入札することが多いのだろう、と。おそらくSSP2は高価格を保証する何らかの価値を創造しているのでしょう。具体的には、データの正確さやインベントリの質、オーディエンスのカバー率などです。バイヤーにとって、こうした価値は広告主のROIにつながり、その結果、好みのサプライ経路を選択できるのです。

 

興味深いことに、テイクレートの透明性を約束することで、バイヤーを引き付けているSSPもいます。しかし実際は、マーケティング用のメッセージに近いと考えた方がよいでしょう。こうしたメッセージは、バイヤーにとって重要なある要素を無視しています。それは入札価格をどれくらい低減できているかです(入札価格の低減と利用料については、「オークションダイナミクスを理解する」の入門編で詳述しています)。

 

それでは、テイクレートの少ないSSP1がダイナミックフロアと修正型セカンドプライスオークションを駆使し、入札価格の90%をバイヤーに請求しているとしましょう。一方、取り分の多いSSP2は入札価格の60%しか請求していません。この場合、バイヤーは次のように自問すべきです。低額のテイクレートがに満足し、本当に50%余分に支払ってもいいのだろうか? 入札価格に限りなく近い金額をバイヤーに請求しようという意欲に満ちたSSPが存在するのは事実です。もしそのようなSSPを選択すれば、バイヤーにとって一番の関心事である広告主のROIが損なわれる結果になるでしょう。

 

重要なのは価値

 

バイヤーとセラーの両者にとって、優先すべきはテイクレートそのものではなく価値の機能です。バイヤーは1秒当たり何百万回も入札する無比の機会を与えられているため、是が非でも優先権を獲得しなければなりません。SSPの広告運用額はバイヤーの利点になり得るのでしょうか? 答えはイエスです。だからこそ、バイヤーはより強力なサプライ経路を選択すべきなのです。パブリッシャーの立場からすれば、これは経済の問題です。SSPのテイクレートはパブリッシャーの収益を左右する1つの要素ですが、あくまでいくつもある要素の1つにすぎません。最も重要な要素は需要の創出であり、その重要性はSSPのテイクレートをはるかに上回っているのです。

 

ほかの条件がすべて同じだと仮定した場合、バイヤーやセラーと安定した関係を築けるのは、バイヤーやセラーにとって最大の価値を創造するSSPです。現在のプログラマティック広告市場では、SSPの広告運用額費は賢明な判断の結果であり、決して判断材料ではありません。